処女

The Three Maidens

花々が光る夜に、三人の巫女は水神（アープ）に祈りと操を捧げる。　雪解け水が大地に潤いをもたらし、草木は花を咲かせ、生きものたちが躍動を始める春。冬を堪えた人々にも、喜びと解放の季節が訪れた。　春の...

2021.02.11

Alternate worldSorceryFantasy

The Unicorn Fountain

聖域にある秘密の泉で、わたしはユニコーンと水浴びをする。　彼はこの地に残る最後のユニコーンだ。わたしは幼い頃から、彼の世話をしてきた。神聖な存在のユニコーンだが、彼に触れることができるのは汚れのない...

2021.01.31

Alternate worldFantasyAnimal/Creature

Compensation for Magic

双子の赤い太陽が沈み、三つ目の月が昇る、新年を迎えた日。　500年に一度の、大魔術祭が執り行われる。これはただの祭りではない。世界の命運がかかった重要な儀式だった。　魔法は世の理（ことわり）を歪曲...

2021.01.28

Space/UniverseAlternate worldSFSorceryFantasy

By Yutaka Isayama
On 2021年3月6日

The Azure Warrior (Ezaphos #2)

「日出ずる国より、碧き戦士が魔を討ちに来たる」　語り継がれた伝説が、新たな歴史のページを綴り始める。　戦士のカイトは、西の山脈の魔族を殲滅し、アリスィア王国の英雄となった。　異世界に召喚されるという、ファンタジーも […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月2日

Bunny Girl on the Meadow

　見渡す限りの草原の中で、わたしはバニーガールの格好をしていた。　母船が原始ブラックホールと衝突し、救命ポッドで脱出したところまでは覚えている。潮汐力で体と意識が引き裂かれたような気がした。　意識が戻ったら、理解に苦 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年1月21日

A flight in a beater spaceship

　まぁ、世の中いろいろあるわけで。　計画通りにはいかないのだよ。　いい仕事があると、タウ・セチまでひとっ飛びしたのはいいが、ポンコツ宇宙船がバグってしまって、ワープできなくなっちまった。　帰りはどうすんだよ？　踏 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月28日

Mermaid in the Cove (Ezaphos #9)

　人魚族（マーメイド）のルベル（Ruber）は、波の穏やかな入り江で物思いにふける。　マーメイドは１０〜１５人ほどの群れで行動する。暖かい南洋の島々の間を海流に乗って移動しつつ、狩りをしたり子育てをしたりする。　彼ら […]

By Yutaka Isayama
On 2021年4月16日

The real Kaori and Eiji. (FBCNL Cyber Tank #8)

　エイジが目を開けると、サイバータンクの中だった。「戻れたか……」　安堵とともに強烈な疲労感に襲われた。これほど長い時間、サイバータンクに入っていたことはなかったからだ。体の節々が痛く、頭もスッキリしない。　タンク […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月1日

Capture me in cold sleep

　コールドスリープからの目覚めは、墓場からゾンビとして這い出るような感覚。　意識はあるが混濁していて、自分の名前すら思い出せない。これはコールドスリープ症候群の症状だ。　しばらくすると、目覚める前に注入された薬で、意 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月22日

Ruins of an alien world

　太陽系からの16.1光年にあるグリーゼ832の第二惑星に、異星人の遺物を発見した。　グリーゼ832はM型の赤色矮星。その第二惑星は地球の約５倍のスーパーアースで、仮称を「ギガス（Gigas）」という。　太陽系の近傍 […]

By Yutaka Isayama
On 2024年1月3日

Desperate situation

　絶望的な状況に陥ると、血液が沸騰しているような感覚になる。　アドレナリンとドーパミンとセロトニンと、その他もろもろでハイになっているからだ。別の言い方をすると、セックスのオーガズムに近い。　わたしは追い詰められ、死 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月1日

The Muse and Pegasus

　ミューズのウーラニアー（Urania）は、金色のペガサスの子供と戯れる。　９人のミューズのひとりであり、占星術と天文を司る。言い換えると、未来と宇宙の事象を見守り、ときには介入する。人間界との接点は多く、国王や神官ら […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月12日

Neigh of a stegosaurus

　ジュラ紀後期（約1億5,500万年前）の地球に降り立ち、ステゴサウルスの群れに出会った。　ワープ宇宙船にタイムマシン・コアを搭載することで、タイムトラベルの運用が可能になった。タイムマシンの発明者である故ウェルズ博士 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月2日

Beyond the Starbow

　亜光速で飛ぶ宇宙船の前方には、星虹（スター・ボウ）が鮮やかなリングを描く。　人類初の反物質エンジンを搭載した恒星間宇宙船「スペース（Spes）」号。名前はラテン語の「希望」と英語の「宇宙」をかけあわせたもの。　地球 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月24日

Logos of the Intellectualized Dog (Solar System Age #2)

　わたしは小さい頃から、地球を見ながら育ったハスキー犬だ。　ハスキー犬はほぼ絶滅していて、わたしが最後の一頭だろう。だから仲間に会ったことがない。　この記録は誰かが犬を擬人化しているものではない。わたし自身の言葉とし […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月18日

Griffin and the Princess

　わたしが育ててきたグリフィンの子供が飛べるようになった。　この子の名前はグリ。グリフィンは人になつかないといわれていたけど、わたしには犬のようになついている。でも、大きくなったら野生の本能に目覚めるかもしれない。それ […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月21日

Throne of Gloom

　戦いの末、ノトス国の玉座を手に入れたが、達成感より虚しさを感じた。　キングはあらゆるものを手に入れられる。権力、領土、金、美食、そして女。それが前キングを倒した挑戦者の報酬だ。　オレはティグリス。ついに頂点に立った […]

By Yutaka Isayama
On 2021年4月13日

Our lifeline is an antique telephone. (FBCNL Cyber Tank #6)

　彼らは古風なドーム状のホールに辿り着き、年代物のダイアル式電話を見つけた。　ホールのど真ん中の床に置かれた電話は、あまりにも場違いであり、それが特別な物であることを示唆していた。「骨董品の電話なんて、これを使えって […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月11日

The Three Maidens

　花々が光る夜に、三人の巫女は水神（アープ）に祈りと操を捧げる。　雪解け水が大地に潤いをもたらし、草木は花を咲かせ、生きものたちが躍動を始める春。冬を堪えた人々にも、喜びと解放の季節が訪れた。　春の祝祭は、一年の始ま […]

By Yutaka Isayama
On 2021年1月29日

Labyrinth with a Cat

　夢界（むかい）の迷宮では、傘が手放せない。　傘がないと迷子になってしまうし、意識を保っていられない。「それは君の心の象徴なんだよ」　雄猫で三毛猫のシュレディンガーはいった。「じゃあ、あなたはなんの象徴なの？」 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年1月28日

Compensation for Magic

　双子の赤い太陽が沈み、三つ目の月が昇る、新年を迎えた日。　500年に一度の、大魔術祭が執り行われる。これはただの祭りではない。世界の命運がかかった重要な儀式だった。　魔法は世の理（ことわり）を歪曲し、生じる歪みから […]

By Yutaka Isayama
On 2024年7月14日

Her in the quantum world

　彼女は量子の世界で生まれた。　“彼女”というのは、正しくないかもしれない。その存在に生物学的性別は、意味がないからだ。女性として見ているのは、観察者であるわたしの選択だ。　彼女は意図せず生まれることになった。誰も想 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月10日

The Princess of Mars’ Escape (Princess of Mars #1)

　火星（マルス）のプリンセスのリン・ソリスは、火星から脱出した。　クリュセ王宮は大騒ぎになった。プリンセスはクリュセ王国の要だったからだ。彼女がいないと、マルスは国家間のバランスを失い、戦乱と崩壊の危機に瀕する。　次 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月5日

Evening of Colliding Galaxies

　ウルティマ・トゥーレ（Ultima Thule）の夜空では、衝突する銀河の壮大なイベントが進行中だ。　世界の果てを意味するこの惑星は、天の川銀河から２億光年ほど遠くの銀河系にある。地球からもっとも遠い入植地のひとつだ […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月19日

Platoon of Robots (Robot Wars #1)

　第5110ロボット小隊は砂漠の惑星「パラディースス（paradisus）」に降下した。　小隊のコールサインは「ブラック・クロタリッド」である。我々の任務は、惑星を荒らす「宇宙バッタ（スペースホッパー）」の殲滅だ。　 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月21日

Sorcerer of the Evil Race (Ezaphos #6)

　魔族の女魔術師トゥリアンダフィリャは、エルフ族との戦いに破れ、かろうじて逃げのびた。　この世界“エザフォス”で最高の魔術師を自認していた彼女にとって、英雄カイトに刃が立たなかったことは大きな誤算だった。彼は彼女の魔法 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月3日

The other side of many doors.

　心の迷路で迷ってしまったら、どのドアを通れば帰れるのかわからなくなる。　たぶんこれは夢の中で、わたしは夢を見ているんだと思う。夢なら覚めれば現実に戻れるはずだけど、どうやったら目覚めるんだろう？　ずいぶんと長い時間 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年4月12日

Her wistful thoughts. (FBCNL Cyber Tank #5)

　わたしたちは混沌化したＶＲワールド内を彷徨っていた。　出口のない迷路。　しかし、クリアするためには出口を見つけないといけない。　エイジは自分の肉体に点滴を打つことを後回しにして、リアルのわたしの肉体を助けに行って […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月31日

Unexpected Encounters on the Beach (FBCNL Cyber Tank #1)

　カオリがビーチでくつろいでいたら、いきなり恐竜に出くわした。「え？　なに？　そういうシナリオだっけ？」　彼女の選んだＶＲワールドは、ハワイのラニカイ・ビーチ。そこでのんびりと過ごす予定だった。「ログアウト！」彼女 […]

By Yutaka Isayama
On 2021年2月14日

Moonlit Night on Another Planet

　月夜の湖は、バルーン・ツリーの種包を飛ばす音が響く。「ヒューー、ヒューー、ヒューー」　それは口笛のような音。　勢いよく弾けた種包は、空高く昇ると「パンッ」と火花を散らす。種包の中に水素ガスが入っていて、ある高度に […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月23日

Phaios the Spear Warrior (Ezaphos #7)

　獣人（ベスティアン）のパイオス（Phaios）は、アリスィア王国軍で先兵部隊の戦士長を務めている。　戦いの最前線に立つのがベスティアンだ。彼らの主たる武器は槍。小柄ながら筋骨逞しい彼らは、槍を巧みに扱い、敵をなぎ倒す […]

By Yutaka Isayama
On 2021年3月25日

Angelus in the Blue Sky (Ezaphos #8)

　有翼族（アンゲルス）（Angelus）の住む天空の島（カエルム・インスラ）（Caelum Insula）に、恋の季節が訪れた。　男たちは歌い、女たちは空を舞う。恋祭りは10日間続く。　引かれあったカップルは喜びのダ […]

By Yutaka Isayama
On 2021年1月20日

Hello Another World!

　それは突然出現した。　空が文字通り「割れて」、冷気のように陰（いん）世界が流れこんできた。　「陰子（いんし）」と呼ばれる、陰世界を構成する素粒子は、こちらの世界に直接の干渉はしないが、じわじわと浸食していく。ダーク […]

2024年11月
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