少年
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カイトとサラは、竜馬(ドラゴン・ホース)に乗ってアリスィア王国の王都に向かっていた。 ふたりはすっかり打ち解けていた。 「王都に着いたら、まず清潔で綺麗な服を調達したいわ。この薄っぺらいシーツは、もうこりごり」彼女は […]
ウルティマ・トゥーレ(Ultima Thule)の夜空では、衝突する銀河の壮大なイベントが進行中だ。 世界の果てを意味するこの惑星は、天の川銀河から2億光年ほど遠くの銀河系にある。地球からもっとも遠い入植地のひとつだ […]
夢界(むかい)の迷宮では、傘が手放せない。 傘がないと迷子になってしまうし、意識を保っていられない。 「それは君の心の象徴なんだよ」 雄猫で三毛猫のシュレディンガーはいった。 「じゃあ、あなたはなんの象徴なの?」 […]
有翼族(アンゲルス)(Angelus)の住む天空の島(カエルム・インスラ)(Caelum Insula)に、恋の季節が訪れた。 男たちは歌い、女たちは空を舞う。恋祭りは10日間続く。 引かれあったカップルは喜びのダ […]
人間たちがいなくなった街の路地で、黒猫を見つけた。 わたしたちアンドロイドと同様に、彼も捨てられたのだろう。お腹が空いていたのか、彼はわたしに甘えてきた。 「ニャーー」 わたしは彼を家に連れて帰った。 主人である […]
新宿地下ダウンタウンで、サイバー・ライブ(略してCy-Li)の配信をする。 Cy-Liは3Dホログラムメディアで、視聴者はロケ地にいるかのようなリアル感を味わえる。立体映像と音だけでなく、匂い、温度、風の感覚まで再現 […]
うたた寝していたカオリは、腹に響く恐竜の咆哮で目が覚めた。 恐竜はすぐ近くにいるようだ。 「エイジ……」 「しっ。ティラノサウルスがハドロサウルスを襲ってるようだ。やつらの嗅覚は優れてるからね、ぼくたちの臭いも嗅ぎつ […]
彼らは銀河中心ブラックホールの近傍まで来た。 渦巻くガスが加熱されて輝き、漆黒の穴に向かって吸い込まれていく。 そして、亜空間通信の発信源と思われる惑星が、ブラックホールを回る軌道上に見つかった。 アンドロイドのP […]
水星の地下都市では、空気と水はゴールドと同等の価値がある。 カロリス盆地の地下に建設された、水星最大の地下都市「カロリス・ヘブン」は、35層もの深さを誇る。垂直断面がスズメバチの巣に似ていることから、アルウス(alv […]
太陽系からの16.1光年にあるグリーゼ832の第二惑星に、異星人の遺物を発見した。 グリーゼ832はM型の赤色矮星。その第二惑星は地球の約5倍のスーパーアースで、仮称を「ギガス(Gigas)」という。 太陽系の近傍 […]
それは突然出現した。 空が文字通り「割れて」、冷気のように陰(いん)世界が流れこんできた。 「陰子(いんし)」と呼ばれる、陰世界を構成する素粒子は、こちらの世界に直接の干渉はしないが、じわじわと浸食していく。ダーク […]
死後じゃなくて、生きているときに彼女と出会いたかった。 サイバーお台場をブラブラしていたら、ゴスロリ・ファッションの彼女に呼びかけられた。 「あのー、ここはどこなんでしょうか? 渋谷に行きたいんだけど」 「はぁ? こ […]
双子の赤い太陽が沈み、三つ目の月が昇る、新年を迎えた日。 500年に一度の、大魔術祭が執り行われる。これはただの祭りではない。世界の命運がかかった重要な儀式だった。 魔法は世の理(ことわり)を歪曲し、生じる歪みから […]
コールドスリープからの目覚めは、墓場からゾンビとして這い出るような感覚。 意識はあるが混濁していて、自分の名前すら思い出せない。これはコールドスリープ症候群の症状だ。 しばらくすると、目覚める前に注入された薬で、意 […]
絶望的な状況に陥ると、血液が沸騰しているような感覚になる。 アドレナリンとドーパミンとセロトニンと、その他もろもろでハイになっているからだ。別の言い方をすると、セックスのオーガズムに近い。 わたしは追い詰められ、死 […]
まぁ、世の中いろいろあるわけで。 計画通りにはいかないのだよ。 いい仕事があると、タウ・セチまでひとっ飛びしたのはいいが、ポンコツ宇宙船がバグってしまって、ワープできなくなっちまった。 帰りはどうすんだよ? 踏 […]
レイカは古い城塞跡で、ラプトリアンの群れに遭遇した。 彼女は油断していた。ここは彼らのテリトリーから離れていたからだ。 とっさに彼女はマジックシールドを張った。 異次元融合(クロス・ディメンジョナル・フュージョン […]
初めて味わう絶望は、二酸化チタンの味がした。 彼らは突然、なんの前触れもなくやってきて、予告なく攻撃してきた。 わたしたちは異星人に侵略された。 植民星スワン5は、太陽系から11.4光年の「はくちょう座16番星B […]
魔族の女魔術師トゥリアンダフィリャは、エルフ族との戦いに破れ、かろうじて逃げのびた。 この世界“エザフォス”で最高の魔術師を自認していた彼女にとって、英雄カイトに刃が立たなかったことは大きな誤算だった。彼は彼女の魔法 […]
わたしは小さい頃から、地球を見ながら育ったハスキー犬だ。 ハスキー犬はほぼ絶滅していて、わたしが最後の一頭だろう。だから仲間に会ったことがない。 この記録は誰かが犬を擬人化しているものではない。わたし自身の言葉とし […]
ジュラ紀後期(約1億5,500万年前)の地球に降り立ち、ステゴサウルスの群れに出会った。 ワープ宇宙船にタイムマシン・コアを搭載することで、タイムトラベルの運用が可能になった。タイムマシンの発明者である故ウェルズ博士 […]
カイトが海岸沿いの道を竜馬(ドラゴン・ホース)に乗って歩いていると、強い結界が張られた場所に遭遇した。 「強い魔力だ。魔族がいるのかもしれない」彼はいった。 海を渡って魔族が来ている可能性もあった。 彼自身も強い魔 […]
空虚に落ちると、苦痛や恐怖を感じなくなる。 意識がみじん切りにされるかのように、茫漠とした感覚だ。 宙に浮いているのに、重力に引かれる感触もある。 意味不明な光景が目に入り、押しつぶされそうな不自由がまとわりつく […]
拡張を続けるサイバーユニバースには、実際の宇宙のように空虚(ボイド)が発生する。 ボイドは荒涼としているが、「無」ではなくノードが極端に少ない空間だ。身を隠すには好都合だが、攻撃を仕掛ける場合には選択肢が限られる欠点 […]
電脳墓地(サイバー・セメタリー)に格納されたわたしは、死んでいるのか生きているのか自分でもわからない。 肉体は死んだ。その記憶はあるし、自覚もしている。 でも、わたしはここにいて、自意識はあるしアバターとしての体も […]
聖域にある秘密の泉で、わたしはユニコーンと水浴びをする。 彼はこの地に残る最後のユニコーンだ。わたしは幼い頃から、彼の世話をしてきた。神聖な存在のユニコーンだが、彼に触れることができるのは汚れのない処女だけなのだ。 […]
わたしは森を守護する森の女王。 7つの大陸に7人の森の女王がいた。わたしはサッピールス(Sapphirus)大陸の森を守護している。 森の女王は、森とともに長い年月を生きる。森の生命力が、女王の霊力の源だ。 わた […]
空が緑色に染まる夜は、ダークエルフが妖艶に舞う。 わたしたちダークエルフは、闇の魔力を使うとして忌み嫌われるが、それは誤解だ。ダークエルフとライトエルフが対立しているというのも、厳密には正しくない。仲良しではないが、 […]
彼女は量子の世界で生まれた。 “彼女”というのは、正しくないかもしれない。その存在に生物学的性別は、意味がないからだ。女性として見ているのは、観察者であるわたしの選択だ。 彼女は意図せず生まれることになった。誰も想 […]
わたしは接敵し、ブロックチェーンの尻尾に偶奇虫(パリティ・ワーム)を突っ込んでやった。 暗号空間(クリプト・スペース)では、暗号は盾であり矛にもなる。しかし、前時代の遺物であるブロックチェーンは、あまりにも鎖が長すぎ […]