2021-02-11
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彼女は量子の世界で生まれた。 “彼女”というのは、正しくないかもしれない。その存在に生物学的性別は、意味がないからだ。女性として見ているのは、観察者であるわたしの選択だ。 彼女は意図せず生まれることになった。誰も想 […]
絶望的な状況に陥ると、血液が沸騰しているような感覚になる。 アドレナリンとドーパミンとセロトニンと、その他もろもろでハイになっているからだ。別の言い方をすると、セックスのオーガズムに近い。 わたしは追い詰められ、死 […]
プリンセス・リンは、地球(テラ)の重力に辟易していた。 知識として知ってはいたが、これほど辛いとは思わなかった。科学者はいずれ慣れるというが、数か月はかかりそうだった。彼女は、火星(マルス)を飛び出してきたことが正し […]
母の形見の赤いペンは、未来から来た魔法のペン。 呪文を唱えると、ホロスクリーンが浮かび上がる。 「This is a pen.」 これが母に教えてもらった呪文。 わたしが12歳のときに母は他界した。 「ママはね、 […]
死後じゃなくて、生きているときに彼女と出会いたかった。 サイバーお台場をブラブラしていたら、ゴスロリ・ファッションの彼女に呼びかけられた。 「あのー、ここはどこなんでしょうか? 渋谷に行きたいんだけど」 「はぁ? こ […]
コールドスリープからの目覚めは、墓場からゾンビとして這い出るような感覚。 意識はあるが混濁していて、自分の名前すら思い出せない。これはコールドスリープ症候群の症状だ。 しばらくすると、目覚める前に注入された薬で、意 […]
カイトが海岸沿いの道を竜馬(ドラゴン・ホース)に乗って歩いていると、強い結界が張られた場所に遭遇した。 「強い魔力だ。魔族がいるのかもしれない」彼はいった。 海を渡って魔族が来ている可能性もあった。 彼自身も強い魔 […]
空が緑色に染まる夜は、ダークエルフが妖艶に舞う。 わたしたちダークエルフは、闇の魔力を使うとして忌み嫌われるが、それは誤解だ。ダークエルフとライトエルフが対立しているというのも、厳密には正しくない。仲良しではないが、 […]
地球人口の9割が死に至った、「神の怒り」から10年が経った。 森林の多くが業火で焼け、隣接する街も燃えた。砂漠化が進行して空気は乾燥し、火災が頻発すると、可燃性のものはなんでも燃えた。都市そのものがゴミの焼却場と化し […]
ジュラ紀後期(約1億5,500万年前)の地球に降り立ち、ステゴサウルスの群れに出会った。 ワープ宇宙船にタイムマシン・コアを搭載することで、タイムトラベルの運用が可能になった。タイムマシンの発明者である故ウェルズ博士 […]
カイトとサラは、竜馬(ドラゴン・ホース)に乗ってアリスィア王国の王都に向かっていた。 ふたりはすっかり打ち解けていた。 「王都に着いたら、まず清潔で綺麗な服を調達したいわ。この薄っぺらいシーツは、もうこりごり」彼女は […]
カオリとエイジはエアバイクを飛ばして、海に水没した都市に辿り着いた。 まるで地球温暖化で都市が沈んだような光景だが、VRワールドにそのような設定の世界はない。別々のVRワールドが重なり合った結果だ。 ふたりはエアバ […]
太陽系からの16.1光年にあるグリーゼ832の第二惑星に、異星人の遺物を発見した。 グリーゼ832はM型の赤色矮星。その第二惑星は地球の約5倍のスーパーアースで、仮称を「ギガス(Gigas)」という。 太陽系の近傍 […]
巨大な太陽を間近に見ていると、イカロスになった気分。 わたしがいるのは、水星軌道の内側を回る人工惑星“バルカン”だ。バルカンは、19世紀に仮想された惑星だったが、観測技術の発展により実在しないことが判明した。 今日 […]
水星の地下都市では、空気と水はゴールドと同等の価値がある。 カロリス盆地の地下に建設された、水星最大の地下都市「カロリス・ヘブン」は、35層もの深さを誇る。垂直断面がスズメバチの巣に似ていることから、アルウス(alv […]
彼女に言えなかったことがあった。 僕は、明日には消えてしまうと。 出会いがあれば、別れもある。 生涯はその繰り返し。 僕が彼女と出会ったのは、まったくの偶然だった。 いや、あれは必然だったのかな。 出会った […]
水の精「ナーイアス」は碧い月夜に、神秘の泉でヘビと戯れる。 ナーイアスは青い肌に青い目をしている。彼女の姿が目撃されることは極めて珍しい。彼女は人間に見られることを嫌い、いつもは水中に隠れているという。 私が7歳く […]
眠っている間に魔法が発動してしまったらしい。 気がついたら、わたしは宇宙船の中にいた。なぜかお気に入りの熊のぬいぐるみと一緒に。 わたしはショーツに彼のシャツを着た格好。 「ちゃんとパジャマを着ておくんだった!」 […]
カオリがビーチでくつろいでいたら、いきなり恐竜に出くわした。 「え? なに? そういうシナリオだっけ?」 彼女の選んだVRワールドは、ハワイのラニカイ・ビーチ。そこでのんびりと過ごす予定だった。 「ログアウト!」彼女 […]
ついにタイムマシンの実用に成功した……はずだった。 実験は成功し、過去に飛ぶことはできた。 しかし、戻ることができなくなった。 これは誰かが見つけてくれることを期待して、残しておくメッセージだ。 「タイムトラベ […]
わたしは森を守護する森の女王。 7つの大陸に7人の森の女王がいた。わたしはサッピールス(Sapphirus)大陸の森を守護している。 森の女王は、森とともに長い年月を生きる。森の生命力が、女王の霊力の源だ。 わた […]
砂漠の強い日差しと暑さの中を、エイジとカオリは重い足取りで進む。 ふたりが出口へのマップを辿って、行き着いたのが砂漠だった。 「こんなところに、出口があるのか?」彼は半信半疑だった。 「暑い、歩きにくい、シャワー浴び […]
レイカは古い城塞跡で、ラプトリアンの群れに遭遇した。 彼女は油断していた。ここは彼らのテリトリーから離れていたからだ。 とっさに彼女はマジックシールドを張った。 異次元融合(クロス・ディメンジョナル・フュージョン […]
神々の戦いでは、人間は戦いの道具でしかない。 戦う相手は敵の神に仕える人間たちであり、血を流すのも人間たちだ。 「神々の戦い」に終わりはない。 なぜなら、神々は戦うことが存在理由だからだ。 人間は死ぬと、塵とな […]
サイボーグは、機械化された肉体の割合に応じて、魂が削られる。 わたしの場合、臓器のほとんどと骨と筋肉の一部が人工物に置き換わっている。その割合は60%だ。つまり、わたしの魂は40%になっているわけだ。 戦場で負傷し […]
拡張を続けるサイバーユニバースには、実際の宇宙のように空虚(ボイド)が発生する。 ボイドは荒涼としているが、「無」ではなくノードが極端に少ない空間だ。身を隠すには好都合だが、攻撃を仕掛ける場合には選択肢が限られる欠点 […]
わたしが育ててきたグリフィンの子供が飛べるようになった。 この子の名前はグリ。グリフィンは人になつかないといわれていたけど、わたしには犬のようになついている。でも、大きくなったら野生の本能に目覚めるかもしれない。それ […]
気持ちがもやもやしたら、エアーバイクに乗って禁断の海に行く。 ドーム都市から外に出るのは、厳しく制限されていた。ドームの外は大気圧が500hPa程度で、地球での標高5000mに相当する。酸素濃度は高めだが、それでも呼 […]
わたしは小さい頃から、地球を見ながら育ったハスキー犬だ。 ハスキー犬はほぼ絶滅していて、わたしが最後の一頭だろう。だから仲間に会ったことがない。 この記録は誰かが犬を擬人化しているものではない。わたし自身の言葉とし […]
新宿地下ダウンタウンで、サイバー・ライブ(略してCy-Li)の配信をする。 Cy-Liは3Dホログラムメディアで、視聴者はロケ地にいるかのようなリアル感を味わえる。立体映像と音だけでなく、匂い、温度、風の感覚まで再現 […]